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老いた父と母と-いつまでもあなたがたの一人娘でいたい~


by ygracia
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母の頭の中

ショックだった。
しあわせに、おだやかに1泊してくれた母だった。
帰り際、父の手をにぎり、「おとうさん、わかる、わたしよ」
「うん」
父もしっかり握り返す。
残念ながら、右に傾いてる父は左側の母のほうに顔を向けることができない。
私も頭をもちあげたが、見ることはできなかった。
「おとうさん、がんばんなさいよ、私もまた来るから」

病院の診察を待つ間に、「はやく、はやく」が始まり、
お得意のため息連発。
車椅子をうしろからひっぱってないと、いまにも診察室のドアを
たたきに行きそうな勢い。

診察中もため息。

血液検査も「はやく、はやく、はやくして」
「なにやってるのよ、はやくしてよ」

これでは薬局で、待てないと思い、ホームへ戻ることにした。

車の中で
「おとうさん、いたかしら」
「やだ、握手してきたじゃない」
「え?」
「がんばってって言ったでしょ」
「そうお?」

「ゆみこは、名前なんだっけ」
「?」
「呼び出してもらうときに困るから」
「?」
「木村よね」
「・・・(木村は伯母てっちゃんの姓だ)」
「ちがうよ」
「なんで、きむらでしょ」
「私、ゆみこよ(だんだん意固地になる私」
「だからキムラユミコだよ」
「・・・ゆみこってだあれ?(私も意地悪)」
「ゆみこは姪よ」
「・・・・ゆみこはわたしよ」
「だから姪なの」
「おかあさん、娘がいるでしょ?」
「え?いないよ」
「結婚してるでしょ、おとうさん、いるじゃない」
「結婚してないでしょが、とうさんはとうさんよ」
「????」
「ひろしにあったよね。さっき。(夫が母に挨拶したこと)」
「うん、ひろしよ、ひろしだよ、」
「ひろしはだれ?」
「ひろしはだれかの連れ合い」
「・・・だれの?」
「わかんないよ、だれかだよ」
「おかあさん、誰と住んでるの?」
「姪と住んでるのよ、今はしかたないのよ」
「・・・おかあさん!何いってるの!(私もおとなげない)
ゆみこは娘で、おかあさんとおとうさんとひろしと孫とみんないるの」
「まご?」
「そう、いるじゃない」
「。。ああ~~~わかんない!!!!」と投げやりになった母。
ギアのうしろのボトル入れを指さし、
「これ、飲みたいんだけど!!!」と怒鳴る。
グレープファンタをおいしそうに飲む母。

涙で目の前が曇って見えなくなった。
あわてて、ハンドルを握りなおし、気を取り直して道をひたすら走った。

母の頭の中は、母の若い頃の一番楽しかったころのままだった・・・・・
母の頭の中_b0055939_10353492.jpg

by ygracia | 2006-08-23 10:35 | 今日のお話