母が

母が2年ぶりに自分の名前と住所を書いた。

印鑑登録などの委任状に母の署名が必要で、
ちまたでは家族が代筆しちゃってる場合もあるらしいけど、
とりあえず母に書いてもらおう、だめなら手を取って、
一緒に書けば良いと、ホームへでかけた。

母のお部屋にアレンジのお花があった。
「あれ、誰かきたの?」
「うん、Sさんの娘たちよ」
母のお花とお茶の生徒さんだった近所の方が姉妹で
たずねてくださったのだった。前からたずねたいと
おっしゃっていた方達。
母の記憶がとてもいいのに驚く。

書類のことを話すと、「あら、そう」
とベッドから起き上がり、机に向かった。
「すいぶん、字を書いていないからね〜〜」とペンを取る。
できるかなと不安になったけど、いちおう、お手本を書いてみせた。
でもそんなものみないで、母はさらさらと住所と名前を書いたのだ。
字はミミズがはったような字だけれど、字を忘れていなかった。
雑誌が見たいという母、あんまり信用してなかったのに、
悪かったなとつくづく思った。

「この書類なんでいるの?」
「お父さんの財産の処分で、いるのよ」
「あら、財産なんてあったの?ないでしょ〜〜ほほほ」
「ないけどね、お母さんとふたりでわけるんだって〜〜」
なんだかなごやかに気分になって、母をベッドにもどす。

「かあさん、元気?」
「??」
(あ、自分のおかあさんのことか〜)
「おかあさん、83才でしょ。」
「あら、かあさん、83なの、元気なのね」
「ちがうよ、マサ子が83なの」
「???」
「おかあさんが83なのよ」
「あ、そう、私83なのね、じゃ。かあさんいないわね〜〜」

「てっちゃん、今日はもうこないの?」
「うん、書類もっていかなくちゃいけないんだ」
「あ、そう。じゃ、また来てね。」

せつない気持ちだけど、このごろよく話してくれる母はうれしい。

夜、介護長から電話がきて、母はまだこのままこのホームに
いられることになった。
よかった。
問題は解決していないけれど、なんとかスタッフの努力で
よい方向に治まりそうだ。
母のため、私のためにがんばってくれた介護長にほんとに感謝する。
ここのホームの方達は、私の心の支えでもあるので
できるかぎり、こちらの応援を受けながら、母の健康な生活を
維持しつづけたいと願っている。

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by ygracia | 2007-01-25 00:53 | 今日のお話

老いた父と母と-いつまでもあなたがたの一人娘でいたい~


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